あなたは歯を失った事はありますか?
歯の数は通常、健康な人であれば上下左右合わせると28本(親知らずを含めた場合は32本)あり、その多さから「1本ぐらい大丈夫」と軽く捉え、多くの歯を犠牲にするという人も少なくありません。
失った歯の代わりになる処置は決して良い事ばかりではなく、希望通りにはいかない場合も多々あります。
そこで今回は、歯を失った後に行う処置の種類を詳しくまとめてみました。
是非参考にして頂ければと思います。
1. 歯を失った場合に選択可能な治療法
歯の代用となる物を人工的に作る事で噛むという機能が再び実現されますが、それには必ずメリットとデメリットが存在するものであり、デメリットを知らずに処置を受けた結果、後に後悔するという人は珍しくありません。
原因によっては選択肢出来ない処置も存在します。
起こりえる歯の損失の原因には、どのようなものがあるのでしょうか?
2. 虫歯による歯の喪失
膿が根の先に溜まっている状態のイメージ写真
虫歯が原因で起こる歯の喪失には、形体を失う程の重度の虫歯、歯の破折、そして歯の根っこの先に膿が溜まる根尖病巣が考えられます。
虫歯は、その進行が神経に近づく事で痛みが発生します。
痛みが強い場合や神経への感染が確認されたときには、神経を取る根管治療が行われ、栄養が行き届かなくなる事で、歯本来が持つ強度や虫歯に対する抵抗力が失われます。
それは例えるなら枯れ木であり、かける、割れるなどのトラブルが起こりやすくなります。
そして、破折部分からの細菌の侵入、または根管内の細菌の増殖により、根尖病巣が引き起こされます。
根尖病巣は、虫歯と違ってはっきりとした痛みを感じないケースも多々ある為、患者自身が危機感を感じられずに早期発見が行えないという事もよくあり、その結果次第に膿が拡大し、歯を抜かざるを得ない状況となるのです。
膿の拡大は、原因である歯だけでなくその周りの歯にも影響し1度に多くの歯を失う危険性もある事から、定期的なレントゲン撮影での確認が必要不可欠といえます。
根管治療についての詳細は、「根管治療を行えば安心?知っておきたい!歯の神経の大切さ」も参考にしてください。
2-1. 可能な処置① ブリッジ
ブリッジ・被せ物のイメージ写真
喪失や先天的理由により存在しない歯の事を、専門用語では欠損歯といいます。
欠損歯の両隣にある歯を削り、被せ物で繋げる処置をブリッジといい、歯の喪失後の処置としては頻繁に行われるものでもあります。
ブリッジのメリットは、処置後の違和感や不快感がほとんど無く、今までどおり自分の歯のように物を噛めるという点です。
被せ物を行う両隣の歯が丈夫であればそれだけ長持ちし、機能的にも天然歯と同等の力を発揮できます。
しかし、両隣にある歯を削る必要があるという点はブリッジの最大のデメリットでもあります。
理由は、その対象となる歯が虫歯1つ無い健康な歯であっても、削らなければならないからです。
1度削ってしまった部分は元には戻りません。
削って詰めるといった処置はいくらでも存在しますが、それはあくまで人工物で補う方法であり、天然歯に勝る素材は存在しないのです。
歯を削る事は、それだけ神経に刺激が伝わりやすくなる事でもあり、知覚過敏や虫歯になった際の進行速度に変化が起こります。
また、ブリッジは必ず両端の歯が必要となる事から、1番奥の歯の喪失時には選択出来ない処置であるという事も覚えておきましょう。
ブリッジについての詳細は、「保険も適用できる!入れ歯とブリッジのメリット・デメリット」も参考にしてください。
2-2. 可能な処置② 義歯
部分入れ歯のイメージ写真
義歯には、1本から数本の欠損部分を補う部分義歯、そして全ての歯を失った際に使用する総義歯があります。
義歯のメリットとして、取り外しが行える事で衛生的に管理が行える点があげられますが、それは「管理を行わなければならない」という事でもあり、義歯のデメリットにも当てはまります。
また、口腔内というのは人体の中でも大変繊細な部分であり、髪の毛1本であっても異物となる物が口腔内に入ればすぐに気付き、それは強い不快感となります。
義歯も異物である事には変わりない為、範囲が広ければそれだけ異物感が強くなり、自然に噛めるようになるまでに時間がかかるという事も理解しておかなくてはなりません。
そして、ブリッジのように歯だけに影響する物ではなく、義歯を支える歯肉、そしてその下にある顎骨の状況により安定感に違いがうまれるので、使用していれば痛みや違和感等の問題が起こる場合があります。
定期的に調節し、口腔内にあった義歯を維持する必要があるでしょう。
義歯に関しての詳細は、「入れ歯の正しい使い方とよく起こるトラブル2選」も参考にしてください。
2-3. 可能な処置③ インプラント
インプラントのイメージ写真
インプラントは、顎骨に穴を開け、そこにチタンを埋め込んで土台として使用する方法です。
ブリッジのように両隣の歯を削る必要がなく、欠損歯のみを補う処置である事から他の歯への影響はありません。
それがインプラントの最大のメリットであり、支持され続ける1番の理由でもあります。
しかしながら、インプラントを行うには「顎骨の面積」が絶対条件であり、インプラントが埋まるだけの余裕が無ければ、いくら処置を望んでも受ける事は出来ません。
無理に処置を行えば、上顎の場合「上顎洞への貫通」、そして下顎の場合であれば「下歯槽神経の損傷」が起こる危険性があり、どちらも今後の生活に大きな支障をきたすものとなります。
また、インプラントの処置は保険が適用されない為、高額であり、処置を行ったとしても一生使えるという保障は無く、もって平均15年といわれています。
出来るだけ長く持たせるには、定期的なメンテナンスが必要不可欠となります。
インプラントについての詳細は、「インプラントのメリットとデメリット」も参考にしてください。
3. 歯周病による歯の喪失
歯周病は、歯が原因ではなく、歯を支える骨が細菌によって溶かされる病気である事から、1本ではなく一度に数本の歯を失う事がほとんどです。
骨が溶けるという事は、歯その物の安定性が失われる為、重度の歯周病であれば、ブリッジを行ったとしても1本1本のぐらつきを抑える程度で、しっかりと噛めるようになるわけでは決してありません。
そして、顎骨の面積を絶対条件とするインプラントは最も選択が難しいものとなり、仮に面積が充分にあったとしても歯周病によって骨の質が弱くなっていれば、骨との相性が合わずにしっかりとした固定が出来なくなります。
義歯も、はりがねを固定する歯と骨への負担を考えなくてはならない事から、歯周病による歯の喪失は、その後の処置の選択が最も難しいものであるといえます。
歯周病についての詳細は、「放っておくと怖い!歯周病がもたらす人生の落とし穴」も参考にしてください。
4. 歯の喪失を放っておいてはならない
歯を失っても、見た目に問題がなければそのままにしておくという人もいます。
確かに、1本の喪失で他の歯が充分に存在すれば、噛む機能には何ら問題はありません。
しかし、歯というのはそれぞれが支えあって並んでいるものであり、突然隙間が出来るとその部分に傾きます。
1本が傾けば、その隣にある歯にも動きが出始める為、歯並びに変化がうまれます。
また、噛むという事は上下の歯同士がぶつかり合う事を指しますが、対象の相手を失った歯はぶつかり合う事が出来ずに、徐々に外へと伸びてきます。
特に上の歯であればそれが起こりやすく、他の歯よりも頭が出て高さに違いが生まれる為、ブリッジを行う際にその歯を削る必要がある場合には大変不利になります。
「たかが1本」と捉え放っておくのではなく、今後のトラブルを想定し、正しく対処を行ってください。
5. まとめ
歯を失う事は、それが仮に1本であっても最終的に全ての歯に影響するものとなります。
失った原因によって可能な処置には違いがうまれる事、そしてそれぞれの処置にあるメリットとデメリットを充分に把握する事で、自分に合った処置が何なのかが見えてくるはずです。
抜く可能性のある歯が存在する方は、事前にその後の処置について歯科医院へ相談しておくことをおすすめ致します。
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