アナタは、歯の神経を取った経験がありますか?
神経を取ると痛みが無くなり、とても楽になりますよね。歯科医院で行うその処置を、根管治療といいます。
苦痛から開放され一安心と感じる方も多い根管治療ですが、実は、歯の神経を取ることは後に大きなトラブルを引き起こすキッカケともなります。
今回は、根管治療の詳しい内容と起こりえるトラブルについてまとめました。
歯の神経の大切さをきっと分かって頂けるかと思います。
1. 根管治療とは?
根管治療とは、専用の機械(爪楊枝のような小さなもの)を使って、歯の神経を取り除く治療を指します。
薬品等を使用して少しずつ行う為、1回では終えることが出来ず、数回同じような処置を繰り返します。
根管治療を行うケースは2通りあり、虫歯などによって細菌感染で起こる神経の炎症と、なんらかの事故によって歯の破折や神経が露出してしまったときに行います。
1-1. 根管治療の流れ
根管治療を行う際の流れについてご説明します。
終了までには数回通う必要があり、平均で5~6回といわれています。
歯科医院によって差はありますので、大まかな期間を事前に確認しておくと良いでしょう。
①神経の入り口を見つける為に、歯の中を大きく削ります。
②専用の機械や薬品を使い、根管治療を行います。(数回)
③根管内の状態が良くなったタイミングで、空洞である根管中を薬品を使い埋める処置を行います。(根管充填)
④根管充填後の歯を形成し、被せ物を行います。一般的に“差し歯”と呼ばれるものがコレに当てはまります。
差し歯に関しての詳細は、「差し歯が取れる4つの原因と取れた後の適切な対処法」も参考にしてください。
1-2. 根管治療の治療時間・回数がかかる理由
根管治療で使用する専用の機械は、歯科医師の指先を使って動かします。
1本の歯の中にある数本の神経の管を探り、細かなカーブや引っ掛かりなど指先に感じる小さな変化を見逃さないように少しずつ行う為、どうしても時間がかかってしまうのです。
また、目に見える範囲以外にも神経を通る管は存在し、無数に細かく分かれている為、1度の処置で取り除くことは難しく、細菌感染による炎症の場合であればどんなに処置を行っても中に侵入した細菌をゼロにすることは不可能といわれています。
薬品を使い、精密に治療をすることで細菌の数をゼロに近づけ、後のトラブルの発生を防ぐことが出来ます。
1-3. 初期の根管治療後に痛みが発生する原因
1度や2度の治療では、全ての神経を取り除くことが出来ず、細菌による炎症が再び起こるケースがあります。
中で圧がかかる為、蓋をせずに綿を軽くつめて次回に繋げるという方法もあり、その場合痛みの発生はほとんどありません。
しかし、痛みがなくなったからといって、治療が終わったわけではけしてなく、放っておくと細菌が増殖して痛みを感じないまま恐ろしいトラブルを引き起こします。
完全に処置が終わったと伝えられるまでは、必ず繰り返し処置を受けるようにしてください。
お口のトラブルに関して、「歯の健康を脅かすお口トラブル/その理由と対処法」も参考にしてください。
2. 神経を取る事で起こる!歯への悪影響
歯の神経を取る根管処置ですが、実は、この処置を行って良い気分になるのは痛みに苦しんだ患者本人だけであり、歯科の知識を持っている人間(歯科医師やスタッフ)からすると大変残念なことなのです。
痛みを感じないかわりに、沢山の危険が発生する神経の損失。歯がどのように変化してしまうのか、詳しくみていきましょう。
2-1. 神経を抜いた歯=“枯れ木”
神経は歯に必要な栄養素を送る役割を持っており、そのおかげで硬いものがしっかりと噛める丈夫な歯が保たれています。
神経を抜くことは栄養が途切れるだけでなく、根管治療によって歯の面積を大幅に減らしてしまうため、今まで耐えられていた力であってもヒビや破折が起こりやすくなります。
枯れ木のように脆くなった歯を再度強化することは難しく、中に丈夫な土台を作っても、その土台との硬さが合わずに割れてしまうことは珍しくありません。
2-2. 根っこの先端に膿が出来やすくなる
根っこの先端に膿がたまる病気があります。
神経は根っこの先端を通り、歯の内部へと広がっているので、内部での細菌感染が原因で根っこの先端に膿が発生します。
恐ろしいことに、この病気は“痛みを感じないケースが非常に多い”という事です。
気付かぬうちに膿が広がるため、最悪の場合、すぐに歯を抜かなければならなくなります。
また、中に溜まった圧が抜ける場所が存在することで痛みは感じずにすみますが、圧の抜ける場所が無い場合であれば、突然激痛が起こる危険性も秘めています。例えるなら、時限爆弾です。
・物を噛んだときにドーンとした重い違和感を感じる
・体調不良や睡眠不足、疲れがたまっているときに違和感を感じる
・神経を取った歯の歯ぐきを押すと、他とは違う感じがする
・その歯の歯ぐき部分にプクッと丸い小さなできものがある
この中で一つでも当てはまれば、根っこの先端に膿が発生している可能性は高いといえます。
1度発生してしまうと自然治癒はなく、悪化するだけなので放っておくことは大変危険です。
また、根管治療の途中の放置は、膿の発生率が大変高いといわれています。
理由は、根管内に細菌がまだ存在するからです。痛みを感じなくなっても、必ず最後まで処置を受けるようにしましょう。
2-3. 歯の寿命が激減する
天然の歯に比べ、トラブルの発生率が非常に高くなるため、その歯本来の寿命が下がります。
寿命が下がることによって抜くまでの期限が早くなり、ブリッジや入れ歯、インプラント等を行う必要が出てくるということです。
要するに、後に“必ずお金がかかる”というわけですね。
入れ歯とブリッジの詳細は、「保険も適用できる!入れ歯とブリッジのメリット・デメリット」でお伝えしております。
3. 根管治療は最終手段と考えるべき
様々なトラブルを発生させる根管治療。
しかしながら、治療を行う側としては、出来るだけ歯の神経は抜きたくないというのが本音です。
神経を抜くというよりも、細菌を無くすためには神経を抜かざるを得ないのです。細菌だけを退治し、神経は正常な状態で残す。そんな治療法は今の歯科医療では存在しません。
根管治療が歯を失ってしまう原因となるのではなく、細菌感染が根管治療を行う原因であることを理解し、出来るだけその処置を受けない努力をしましょう。
「痛くなったら歯医者へ行く」その考えは、アナタの口腔内を一生不幸へと導きます。
「痛くなる前に歯医者へ行く」これを実行する事で、30年、40年先に、きっと自分の歯で食事が出来る幸せを感じるはずです。
今あるトラブルの解決に力を注ぐのではなく、数年先の未来に繋がる努力をして下さい。
まとめ
根管治療は、痛みに苦しむ方には大変便利な処置かもしれません。
しかし、痛みを感じることは、虫歯の進行や歯に起こるトラブルを自分自身で発見できる、いわばサインの役目をもっています。
痛みの原因が神経へとたどり着く前に、少しでも違和感を感じたら早めに歯科医院へ行くように心がけましょう。
神経の損失は、アナタの将来をも左右するということを忘れてはいけません。