歯科の治療を効率良く行う為に使用される様々な道具。
その中に、ラバーダムというものがあります。
ラバーダムを使用する事で得られる効果として1番に「治療の成功率を上げ、再発防止が期待できる」というものがあります。
今回は、日本だけでなく海外でも大変評価の高いラバーダムについて細かくまとめてみました。
歯科医院へ行かれる方は、是非知識の1つとして持っておいて頂ければと思います。
1. ラバーダムとは?
ラバーダムをしている状態の歯のアップ写真イメージ・歯だけゴムシートの上に出ている
ラバーダムとは、治療の際に使用するゴム製のシートで、治療部位への唾液の混入を防ぐ役割があります。
ゴム製のシートに専用の機械を使って穴を開け、そこに治療を行う歯を1本だけ通します。
そして、通した1本の歯とシートをクラスプとよばれる道具で固定して完成となります。
シートの表面(歯科医師の見える側)には治療部位である歯のみが存在する状態になります。
2. ラバーダムが高い評価を受けている3つの理由
技術に自信のある歯科医院であればある程、ラバーダムを使用している所は多いといわれており、反対にラバーダムを使用しない所は、今後のトラブル等のリスクが充分に考えられると言われています。
ラバーダムに隠されたメリットとは一体なんなのでしょうか?
2-1. 治療部位への唾液の混入を防ぐ
本来唾液は、口腔内の乾燥による細菌の増殖を防ぎ、虫歯の進行を抑える効果がある為、多ければ多いほど良いとされています。
しかしながら、唾液によって細菌をゼロにする事は不可能であり、唾液の中にも多くの細菌が存在するという事になります。
つまり、治療部位への唾液の混入は「細菌の混入」と同じ意味を持ち、治療を行っても内側からの虫歯の再発が起こる可能性が高くなるというわけです。
特に、神経を抜く根管治療での唾液の混入は厳禁とされており、混入があると処置後の根先病巣(歯の根っこの先に膿が発生する病気)が起こる確率が、とても高くなるといわれています。
重度の根先病巣では歯を抜く事もあるので、発生を防ぐ為の工夫が必要不可欠といえるでしょう。
根管治療の詳細は、「根管治療を行えば安心?知っておきたい!歯の神経の大切さ」をご参考ください。
2-2. 治療に使用する道具や薬品の飲み込み防止に役立つ
根管治療では、ラバーダムを頻繁に使用します。
その他の治療では使わない小さな道具(歯の根っこの中を取り除く為のハリのような物)や強力な薬品等を使用する根管治療での、患者の誤飲は大変危険であり、命に関わる可能性も十分に考えられます。
ラバーダムにはそれを防ぐ効果があり、シートから治療を行う歯のみを表に出す事で、仮に口腔内への道具や薬品等の落下が起こってもシートにより守られている為、誤飲するという事はありません。
大人よりも唾液の分泌が多く、誤飲の可能性が高い子供には、ラバーダムの使用は大変有効な方法といえます。
ラバーダムをしている治療中の男の子の写真イメージ
2-3. 出血による妨げが無い
クラスプの固定位置は、歯と歯茎の境目(歯の根元部分)であり、歯茎はシートの表側には見えません。
その為、唾液や出血による治療の妨げがなく、精密に治療を行う事が可能となります。
特に出血は唾液のように透明ではない事から、術者の視界を妨げ、治療を中断せざるを得ない状況となるケースも少なくありません。
これは、全ての治療に共通する事でもありますので、事前に歯茎の出血を止める努力を心がけましょう。
3. ラバーダムのデメリットとは?
治療の成功率を上げる素晴らしい道具のラバーダムですが、使用するには2つの問題が発生します。
それは「息苦しさ」と「痛み」です。
ゴム製のシートは顔半分を覆う程の大きさをしており、鼻から顎下までがシートにかかる状態となります。
唾液の吸引が頻繁に行われないと、唾液が口腔内に溜まってしまい口での呼吸が行えませんが、ラバーダムを使用する事により、鼻での呼吸もしづらくなります。
また、治療部位である歯とシートを固定するクラスプは先が鋭利な物である事から、少しでも歯茎に食い込めば強い痛みが発生します。
「呼吸がしづらい」「痛い」などと感じたらすぐに歯科医師またはスタッフに伝えるようにしましょう。
調節を行っても痛みを感じる場合は、麻酔をする場合もございます。
3-1. 日本の歯科医院はラバーダムの使用率がとても低い
保険診療を基本としている日本での歯科治療では、何よりもスピードを重視する歯科医院がほとんどです。
ラバーダムの使用は、シートへの穴あけから痛みの無い固定までに多少なりとも時間が必要であり、たまに使用する程度の歯科医院であればよりその傾向は強くなります。
また、ラバーダムのデメリットとなる「息苦しさ」「痛み」は患者からのクレームに繋がりかねない為、そのリスクを背負うぐらいなら最初から使わないと考える歯科医師もけして少なくはないでしょう。
そんな日本とは違い、保険診療に対応していない海外での歯科治療ではラバーダムの使用は当たり前であり、保険診療でないからこそ患者自身の歯科に対する興味や知識が高く、デメリットを知っていても希望する方が多いといわれています。
事前の説明や治療途中での確認をしっかりと行う事でクレームは防ぐ事ができ、医院側が注意する事でデメリットは充分防ぐ事が出来ます。
時間やトラブルを怖れずに治療の成功率の向上に向け、頻繁にラバーダムを使用して頂きたいと思います。
3-2. 根管治療を行う際には、必ずラバーダムの使用が可能かを確認する
歯科医院によっては、根管治療であってもラバーダムを使用しない所もあります。
その為、患者自身が正しい知識を持ち、ラバーダムの使用を望むのであればしっかりとその思いを伝える必要があります。
言葉で伝えられて「面倒だからやりません」と断る歯科医院は恐らくいないでしょう。
取り扱っていないのであれば、治療を拒否するという選択肢もございます。
歯科の治療には「完治」という言葉は存在しません。
1度削った歯は二度と戻らず、削れば削るほどその歯本来の強さを失います。
どうせ削って処置を行うのであれば、後のトラブルに繋がらない精密な処置を受けるよう心がけましょう。
その思いがあるのとないのとでは、将来の口腔環境に大きな違いがうまれます。
正しい治療方法で、自分自身のお口を守りましょう。全てを歯科医師に任せるという事がないようにして下さい。
4. まとめ
ラバーダムの3つの魅力、そしてデメリットや注意点をしっかり把握し、それを歯科医師に伝える事は、「精密な治療を望んでいます」と発言しているようなものです。
良いプレッシャーを与える効果がありますので、是非ラバーダムを取り扱っているかの確認をしてみて下さい。
また、最近では、雑誌やテレビ等にも歯科の情報が流れており、歯科に対する興味や知識をお持ちの患者も増えてきております。
直接目に見えない場所の治療であるからこそ、得た知識を元に自分の意思での判断が大変重要となってきます。
持っている情報をしっかりと伝え、不安や不満があるのであれば必ず質問するようにしましょう。
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