外科や内科に比べ、直接生命の危機を感じることのない歯科ですが、実は“症状の悪化”に歯槽膿漏が深く関係しているという事を知っていますか?
糖尿病や心疾患など生活習慣病の他にも、肺炎や早産・低体重児出産の発生率が上がる原因ともされています。
そこで今回は、歯槽膿漏の危険性とその対策について詳しくまとめました。
健康な毎日を送る為にも、是非目を通して頂ければと思います。
1. 歯槽膿漏が身体に影響を及ぼす理由とは?
一般的に歯槽膿漏(しそうのうろう)といわれる歯茎の病気は、歯科業界でいう歯周病と同じであり、強いぐらつきや歯茎からの排膿などが起こる重度の歯周病を歯槽膿漏と表す場合がほとんどです。
重度の歯周病では、それの元となる細菌の種類や数が急激に増加し、歯茎だけでなく歯を支える骨にまで関与している為、個人で行う歯磨きや歯科医院での歯石除去を丁寧に繰り返し行ったとしても、完全に治すことは不可能といわれております。
歯茎が引き締まり、出血がある程度おさまる程度で、細菌によって溶かされてしまった骨をもとの姿に戻すことは大変困難であり、長期にわたる治療、もしくは抜歯せざるを得ない状況も少なくはありません。
歯周病に関する詳細は、「放っておくと怖い!歯周病がもたらす人生の落とし穴」も参考にしてください。
1-1. 歯槽膿漏を引き起こす細菌が様々な病気の引き金に
歯槽膿漏と糖尿病や心疾患などとの関係性は、その増殖した細菌にあります。
糖尿病による代謝異常や免疫力の低下は、歯周病菌が発生しやすい環境を作り、症状の悪化を促進させます。
また、糖尿病でなくとも、血液と一緒に増殖した細菌が全身へ運び込まれ、それが血栓となり、動脈硬化が起こって脳卒中や心疾患といった命に関わる病気を引き起こすといわれています。
妊婦時に歯周炎や歯周炎といった歯茎のトラブルが起こりやすい原因として、ホルモンバランスの低下や“つわり”による口腔清掃のやりずらさがあげられます。
磨き残しが数日続くことで歯茎には炎症が起こります。
その後、出血が起こり、歯茎の中で細菌が増殖、次第に状況が悪化するというわけです。
全身に運び込まれた細菌は、早産・低体重児出産の発生率を上げる為、生まれてくる子供にも悪影響を及ぼします。
産後の子育てにも母親の口腔環境は重要なものとなりますので、妊婦時、もしくは妊婦前から、予防をしっかり行いましょう。
つわりで上手くお手入れが出来ないという方は、一度歯科医院で相談してみることをおすすめ致します。
2. 口腔内細菌との関連性が高い病気【誤嚥性肺炎】
日本人の死亡原因とされる、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、これらを“三大疾病”といいます。
そして、それに続く“第四位”の病気が肺炎であり、65歳以上の高齢者による死亡率は96%ともいわれています。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は、嚥下機能の低下による肺への異物混入が最も原因とされており、食べ物や飲み物と一緒に細菌が入ることで肺炎を引き起こします。
免疫力の低下がみられたり、他の病気との合併が生じた場合は、死亡率が大幅に上がることから、90歳以上の高齢者の死亡原因の第二位に肺炎が位置づけられています。
よって、介護の必要な方や寝たきりの状態で行う飲食には、与える側が十分な注意をはらい、その後の口腔ケアを徹底的に行う必要があるといえます。
2-1. 歯槽膿漏と誤嚥性肺炎の関連性
歯槽膿漏が恐ろしいのは、強い痛みを感じないまま状況が進行していくことです。
歯を支える骨が細菌によって溶かされ続けると、歯は自然に抜けてしまいます。
抜けていなくとも、強いぐらつきがある場合、食べ物をしっかりと噛む事ができないことから、消化不良が起こりやすくなり栄養の吸収が衰え、免疫力や機能低下を引き起こします。
硬い食べ物をしっかりと噛む事で、脳に指令が送られ、消化器官の働きを促すだけでなく、唾液の分泌を促進させ、虫歯になりにくくします。
噛めなくなるという事は、それらすべての能力を失うという事でもあるのです。
また、噛めなくなる状況が続くと、咀嚼に必要な筋肉の機能が低下し、同時に物を飲み込む動作にも支障をきたします。
結果、誤嚥性肺炎が起こりやすくなるのです。
3. 歯槽膿漏にならない為の予防法
歯茎の炎症から始まり、最終的に歯を失う確率の高い歯槽膿漏。
1本の歯だけでなく、一度にいくつもの歯がその対象となるケースがほとんどです。
突然、入れ歯やインプラント等を考えなくてはならない…そんな状況になってもおかしくありません。
歯槽膿漏予防として、最も効果的な方法は“適切なお手入れ”です。
大切なのは、歯ブラシを使って歯を磨く、その磨き方が大切です。
歯茎の炎症や出血というのは、歯の根元部位に起こる症状であり、特に細菌による出血は、その部位以外では起こりません。
よって、歯槽膿漏の初期症状である炎症や出血を無くす為には、歯の根元を磨かなくてはならないのです。
磨き方としては、歯ブラシの毛先を歯の根元に当てた後、軽くくい込ませてから動かすように意識してください。
また、歯ブラシを選ぶ際に注意して頂きたいのが「毛の硬さ」です。
軽い炎症の場合や歯磨きをしても痛みを強く感じないのであれば「ふつう」で良いですが、炎症が酷くて磨くと痛い、もしくは磨く力が普段から強いという方は「やらわかめ」の物を使用する事をオススメ致します。
「かため」の歯ブラシは、歯茎からの炎症や出血がない健康な場合であっても、歯や歯茎を磨耗させやすいといわれているので、やめましょう。
炎症や出血の起こる理由としては、根元部位の歯茎と歯との間に存在する溝に、歯垢(プラーク)が長期間残っている事があげられ、それを除去する事で炎症が治まり、出血が止まります。
汚れを放置した状態が続くと、歯茎の炎症や出血だけでなく排膿や歯のぐらつきといった症状が現れ始め、重度の歯周病=歯槽膿漏となるのです。
3-1. 歯間ブラシは歯周病予防に最適
歯ブラシによる清掃も大切ですが、歯ブラシの毛先が届かない「歯と歯の間の歯茎」の炎症や出血を止めるには、補助道具である歯間ブラシが大変効果的です。
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時間をかけて丁寧に磨いた後であっても、歯間ブラシを通してみると案外汚れはついており、いかに歯ブラシだけでは不十分であるかがよく分かります。
歯間ブラシは、歯茎マッサージの効果の他にも、歯の根元の汚れを落とす事で虫歯予防にも繋がります。
よく「歯間ブラシを使うと、歯と歯の間の隙間が大きくなった」「出血があるので怖い」という方がいらっしゃいますが、歯と歯の間の隙間は健康な方であっても存在するものであり、歯間ブラシを使用した事がないという方や、時々使うという方であれば、歯と歯の間の歯茎の炎症は珍しいことではけしてありません。
歯間ブラシを通す事で汚れを落とし、歯茎が引き締まると、自然と隙間は現れるものです。
隙間や出血が怖いからとお手入れを避けていては、歯槽膿漏を防ぐ事は出来ません。
歯科医院では、歯ブラシは勿論の事、補助道具の使用方法も細かく丁寧に教えてくれますので、一度相談してみると良いかもしれません。
4. まとめ
歯槽膿漏は、初期段階の自覚症状がないに等しく、重症化してから初めて気付くという方が多い恐ろしい病気です。
普段から口の中をよく観察し、歯茎の炎症や出血等にすぐに気付けるように心がけましょう。
また、歯槽膿漏は歯茎だけでなく骨にも影響する病気である為、病気の発見や症状の悪化を知るには歯科医院でのレントゲン撮影が必要となります。
定期的にチェックする事をオススメ致します。
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