冷たいお水を飲んだり、歯ブラシを当てるとピリっと歯がしみる、虫歯だと思って歯医者さんへ行ったら「知覚過敏」といわれたなんて経験はありませんか?
虫歯と知覚過敏はまったく別の疾患です。
今回は知覚過敏のメカニズムや治療方法などをわかりやすく簡単にご説明します。
1. 知覚過敏とは
そもそも知覚過敏とはどんな状態なのでしょうか。
知覚過敏とは、正確には象牙質知覚過敏症(ぞうげしつちかくかびんしょう)といいます。
これは、虫歯とは異なるものです。歯は、内側から神経、象牙質、エナメル質の順番に構成されています。
エナメル質は、とても固い組織で通常痛みを感じることはありません。
一方、象牙質は象牙細管という見えない小さな穴が無数にあいており、これは神経へとつながっています。
その象牙細管に冷たいものや機械的な刺激が加わると、神経へと伝達し痛みを感じます。
知覚過敏は、何らかの原因で象牙質が露出し、その露出した象牙質になんらかの刺激が加わることで歯がしみる症状をいいます。
歯の異変の症状や対策については、「虫歯だけじゃない!4つの症状別にみる歯の異変と対策」も参考にしてください。
1-1. 知覚過敏の症状一覧
・歯ブラシを当てた時にぴりっとした痛みがある。
・冷たいものを飲むとしみる
・冷たい風が歯にあたるとしみる
・あたたかいものを食べるとしみる
・甘いものを食べるとしみる
・酸っぱいものを食べるとしみる
どれも、虫歯に良く似た症状ですが知覚過敏の症状とも一致します。
これらの症状が当てはまる方はもしかすると「知覚過敏」かもしれません。
1-2. 知覚過敏になりやすい人
知覚過敏にはなりやすい人とはどのような人なのでしょうか。
①歯周病で歯茎がさがった。
②歯ぎしりや食いしばりをよくしている。
③歯磨きの時に横磨きで、力いっぱい磨かないと磨いた気がしない。
④研磨剤の沢山入った歯磨き粉を長年使用している。
⑤ホワイトニング中である
①と③は、歯茎が下がってしまい、歯の根が露出している状態です。
これは、前述に述べた通りなのでイメージがわくのではないでしょうか。
しかし、②の歯ぎしりと知覚過敏が関係していることはご存知でしたか?
歯ぎしりをすることで、歯に強い力が加わり、歯と歯茎の境目付近のエナメル質が楔状(けつじょう)に欠損してしまうことがあります。
そうすると、象牙質が露出して痛みが生じてしまします。
④の、適正な量の歯磨き粉を使って歯磨きをすることは、何ら問題はありません。
しかし、過剰な研磨剤入りの歯磨き粉をたっぷりつけて長年歯磨きをすることでエナメル質が傷ついているということも考えられます。
歯磨き粉の適正な量は、歯ブラシの毛束の長さの3分の1程度のごく少量です。
歯ブラシのブラシいっぱいに歯磨き粉をたっぷり使用している方は、次回から3分の1を目安に使うようにしてみて下さい。
⑤の歯医者さんにてホワイトニング中の方は、知覚過敏の症状の出やすい状態です。
一度ホワイトニングを中断するか歯医者さんに相談することをお勧めします。この場合、ホワイトニングを中断する事で、症状は落ち着きます。
ホワイトニングの詳細は、「知ってお得!自分に合ったホワイトニング選び10のコツ」を参考にしてください。
2. 知覚過敏になった場合の治療方法
では、知覚過敏になってしまった場合、治療方法はどのようなものになるのでしょうか。
痛みの程度や痛みの原因によっても異なりますが以下に説明致します。
2-1. 痛みが軽度の場合は、知覚過敏専用の歯磨き粉を使用する
知覚過敏に効果的な薬効成分配合の歯磨き粉が市販されています。
即効性はあまりないかもしれませんが、少しずつ効果を発揮しますので、気長に1本使いきるつもりで使用してみましょう。
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2-2. 象牙質の露出している部分に、知覚過敏のお薬をコーティングする
以下は歯医者さんでの処置となります。
薬はいくつか種類がありますが、前に述べた痛みを感じる象牙細管を塞いで外来刺激を遮断することを目的としています。
治療は、基本的には1度で終わりますが、症状が続く場合は繰り返すことで効果を発揮する場合もあります。
2-3. エナメル質、象牙質が大きく削れている場合は、白いプラスチック材料で埋める
エナメル質、象牙質が大きく削れてしまっている場合には、こちらの治療も基本的には1度で終わりますが、治療の必要な歯の本数が多い場合は何度かに分けて治療を行う場合もありますので、歯医者さんに確認すると良いでしょう。
2-4. 歯ぎしりが原因の場合は、寝ている間にマウスピースを装着する
歯ぎしりや食いしばりは、寝ている間に行っていることがほとんどです。
それ自体を止めることは難しいので、加わる力をマウスピースを付けることで分散させ軽減させることを目的とします。
マウスピースは、上の歯に装着します。歯の型取りをして、マウスピースを作成してもらいますので、治療回数は2回ほどかかります。
使用してみて微調整の必要な場合はそれに応じて回数がプラスされます。費用は、5000円程度です。
マウスピースは、穴が開いたりしなければ繰り返し使う事が出来ます。
歯ぎしりや食いしばりのある方は、ひとつ作っておくと安心かもしれません。
2-5. 普段からなにもしなくても痛い場合、神経を取る処置を行う
痛くてどうしようもないという場合は、神経を取ってしまえば痛みの症状からは解放されます。
しかし、神経をとってしまうと歯に血液が通わなくなり、歯そのものが弱くなってしまいます。
木で例えるならば、枯木の状態です。
できるだけ、神経を取る処置は行わずに2-1から2-3にある処置を行った後の最終手段とすることをお勧めします。
3. 知覚過敏の予防方法
では、どのように知覚過敏を予防したら良いのでしょうか。
知覚過敏になる前に、なるべくなら予防をしたいものです。
まずは、歯磨きの際に、歯と歯茎の境目を優しくマッサージするようにして磨きましょう。
これは、歯茎に過剰な力を加えてを退縮させないことと、マッサージすることで、歯周病予防に効果を発揮します。
エナメル質はとても固い組織ですが、象牙質は、エナメル質に比べて柔らかいので強くブラッシングすると削れてしまいます。
歯茎が下がり根が露出している方は、特に知覚過敏を悪化させる原因となりますので、なるべく力を入れず優しく磨くことを心がけてみて下さい。
どうしても、力を無意識に入れてしまうという方は、歯ブラシを柔らかめのものに変えてみましょう。
また、普段固めの歯ブラシをお使いの方は、ふつうの硬さのものに変えてみるのも良いでしょう。
歯ブラシの持ち方も、歯ブラシを握るようにして持ってはいませんか?
歯ブラシの正しい持ち方は、鉛筆の持ち方と同じです。
握り拳を作るようにして歯ブラシを持つと、おのずと力が入ってしまって強くゴシゴシと磨いてしまいがちです。鉛筆を持つように軽い力で持つように心がけましょう。
歯ブラシは、毎日行っている生活習慣の一つです。
何十年も続けてきた生活習慣を変えることは、簡単ではありません。毎日少しずつ意識して変えてみるようにしましょう。
4. 最後に
知覚過敏は、虫歯ではありません。
しかし、しみたり、痛みがあったりと症状としてはつらいものです。
一度なると根本的に治すことは難しいのでなるべくならないよう、ブラッシングを強くしない事、歯ぎしりや食いしばりの自覚のある方は、早めに歯医者さんで相談してみることをお勧めします。
石田かすみ
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